作家
上智大学外国語学部フランス語学科教授
私は2度、フランス政府給費留学生としてフランスの土を踏む幸運に恵まれました。この2回の留学は決定的でした。というのも、現在のフランス語教師としての生活は、この2回の留学の上に築かれているからです。しかし、同時に、私が得たものは、職業的な次元を超えた意味を持っています。私の念頭にあるのは、フランスで出会った妻をはじめとする数多の男女、その人たちとの出会いがなかったならば、人生はなんとも味気なく、またいっそう耐え難いものであるに違いないという気持ちを起こさせる男女のことです。私は、彼らとの出会いに満たされた年月を、フランス語とともに,フランス語の中で生きてきました。それが現在の、フランス語で作品を書く日々の土台です。フランス語とフランス語がその扉を開く、神も王もいない「中間の王国」は、自分と世界を観察し理解するうえで特権的な空間であり、私の人生の核心を形成しています。それゆえ,私はフランスに心からの感謝と深い共感を送りたいのです。この苦悩に満ちた世界において、今日ますますその必要性が再認識される、フランス語という言語と切り離すことのできないユマニスト的文化の守り手としてのフランスに、です。
Crédit photo : Catherine Hélie/Gallimard