France Alumni会員インタビュー① (後半)
「日本の地域医療にも関わりながら、国際医療ボランティアとして世界に貢献したい」
松崎 秀信さん(初期臨床研修医 / モンペリエ大学 留学)
フランス大使公邸で行われた「世界の医療団」(Médecins du Monde)の催しで、ローラン・ピック元駐日フランス大使と。
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WHOで感じたこと
- 興味を持ったら人に相談したりしてすぐに行動に移す松崎さん。大学時代には、WHO本部に行くチャンスも得たとか?
はい。大学のとある先生がWHOに行かれると聞き、その先生に頼んで、WHO本部に特別に入れるビジター証を作ってもらいました。2週間、WHO内部のミーティングや会議にアシストさせてもらいました。そもそも、ボランティアって、行政とつながっているんですね。実行部隊のボランティアが一番下にいて、一番上で指示を出すのが行政の人たち。ボランティアをやるうえで、行政とのかかわりや、行政の人たちが何を考えているのか等を知ることが大切なんです。あと、WHO本部に行って分かったことは、WHOの職員は行政から上がってくる人が多いということ。現地のことをあまり知らないのに、政策決定ができるのかな、という疑問が僕の中で浮かびました。だから将来的に、ボランティアで経験を積んでそこで得た知見をWHO本部に持っていくようにすれば、現地と行政の乖離が少なくなるかなと思っています。
- 現在は、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院に留学中です。どんなことを勉強されていますか?
現在は、新潟県村上市の初期研修医海外留学支援制度を使用して、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の公衆衛生修士コースで勉強しています。
ボランティアは一時的なもので、ボランティアが帰ってしまえば、そこにいる人たちの医療はなくなってしまう。そうではなく、ボランティアがやっていたことを行政に受け渡して、その地域が自分たちの力だけでうまくまわっていくことが必要だと思っています。
ボランティアから行政に受け渡す時には、公衆衛生的な知識が必要です。医学的観点から政策に関われるようになりたいと思っています。エビデンスをもって、「この地域にはこういうことが必要です」という政策提案ができるようになりたい。そのための勉強をしています。
あと、ロンドン大学は熱帯医学に強いです(公衆衛生ランキング世界3位*)日本ではアフリカなど熱帯地域の医学を学べるところが少ないので、ここで公衆衛生を学ぶと同時に、熱帯医学を学んでいます。
また、南アフリカ、スーダン、ウガンダなど、いろいろな国から学生が来ているので、その人たちと話すことも興味深いです。
*https://globalscholarships.com/best-public-health-schools/
世界にも日本にも貢献できる医師をめざして
- これからのキャリアプランについて教えてください。
ロンドン大学での修士を終えたら、新潟県の村上総合病院に戻り、初期研修の再開とその後に外科の専門医資格を取るつもりです。
村上市の留学支援制度で留学している理由として、制度の中で新潟県の地域創生に関わる、新潟の地域医療の向上に携われることがあります。それができれば 「国境なき医師団」での活動にも活かせると思っていて、実際にボランティアに行けるのは5~6年後かと見込んでいます。
- なるほど、「国境なき医師団」の一員になるには、一定の能力が求められる訳ですね。国際医療ボランティアとしてご活躍することが、最終ゴールとお考えですか?
僕が考えている働き方は、日本で働きながら、2,3か月短期で休みをもらってボランティアに行くというスタイルです。
国際医療ボランティアは、派遣させてもらえる基準を満たしていても、能力不足のことがあります。自分でできる最大限をやって、また自分の課題を見つける。現地で足りないなと思ったことを日本に持って帰ってきて、足りない部分を補う勉強をし、また世界へ...というふうに、どんどんレベルアップしていきたいと思っています。
将来は外科医としてボランティアで働く予定ですが、ボランティアの現場では、外科の知識だけでなく、公衆衛生、熱帯医学、小児医学など、日本と海外で広く勉強したことが役に立つと思っています。
- フランス留学経験も活きてきそうですね!最後に、これからフランス留学を考えている方、医師を志す方、夢を追いかけるすべての方にアドバイスをお願いします。
自分みたいな人が増えればいいな、と常々思っています。僕の通っていた大学は、地元の医者の子供が多く、大学もストレートで卒業し、地元でお医者さんになる人が多い。それももちろん大事なのですが、そのような人たちを見て、世界を見て働きたいという人が委縮しないようにして欲しいです。「自分がやりたい!」という気持ちを大事にして欲しいですし、「やりたい」と声に出していろんな所で言っていると、いろんな人が助けてくれます。もちろん、自分一人での勉強も大事ですけど、時には他の人に頼ることも組み合わせながら、自分の夢を実現していってほしいなと思います。
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インタビューは、ご留学先のロンドンからオンラインで行われました。早朝の、授業前のお忙しい時間にも関わらず、終始穏やかな表情で質問に答えてくださいました。
明確な目的意識と、目標を達成するためには何が必要かを随時考え行動に移す実行力をお持ちの松崎さん。親しみやすく人を惹きつけるお人柄も、夢の実現に一役買っているのではと感じました。
フランス留学中に、電車の中で知り合ったフランス人のマダムたちに留学の目的や将来の目標を話すと激励され、「これで美味しいものでも食べて頑張って!」とお金まで頂いたという仰天エピソードもご披露くださいました。「強き者が弱きを助ける」という、フランス人の根底にある助け合いの文化を感じたそうです。
「国境なき医師団」の一員として、世界を舞台にご活躍される日を楽しみにしています。
Merci et bonne continuation !
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